はちみつな彼の裏事情

どうしたんだろう、なんて思って隣の鈴木くんを見ると彼はひどく慌てているようだった。


「桜田さん、今携帯もってる?」

わー!とか言ったあとに、鈴木くんは私にすがるような顔つきで、聞いてきた。

目を大きく見開いて、パチパチと何度も瞬きをしている。なんだか失礼だけど、慌ててる鈴木くんもこんな表情をする鈴木くんも可愛くて、少し笑えてしまう。

「携帯あるよ。どうかした?」

「うん。あのさ…今俺の携帯に鳴らしてくれない?」


すごく真剣な表情で、お願いします!なんて懇願してくるけど、携帯鳴らすことくらい対したことはないし、そんなに言われると何だかこちらが恐縮してしまう。

「いいけど…」

私はカバンから取り出した携帯を操作する。電話帳を開いて、鈴木くんの名前を探す。

鈴木くんは重要なことに気がついていない。…私は鈴木くんの電話番号を知らないのだ。

どうやって電話をかけろというのだろうか。
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