はちみつな彼の裏事情

番号知らないんだけど…
このことをどうやって伝えればいいのか分からなくて…普通に言えばいいんだろうけど、どうも言えない私は携帯を無駄に時間をかけて操作している。

その様子を見てか、鈴木くんは何かを思い出したかのように、声をかけてきた。

「桜田さんって俺の番号知らないか…」

「うん…ごめん、知らない」

「今年初めて同じクラスになったんだし、知らなくて当然だよね」

同じクラスになって、隣の席になったからといっても鈴木くんの番号を聞くことがどうしても躊躇われていた私は、鈴木くんの番号もアドレスも知らなかった。

どうせ、すぐに席替えもしてしまうだろう。そうしたらきっと、もうこんな風にたくさん話すことはないだろうし、知らなくても別にいいって思ってた。

本当は知りたいけれど、彼はみんなの憧れで、それほど遠い存在なのだ。と思うとどうしても教えてなんて言えない。

「桜田さん」

鈴木くんが、私のほうをゆっくりと見て、微笑んだ。そして、手を差し伸べてきたんだ。
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