はちみつな彼の裏事情

声の先には、鈴木くんの笑顔があった。

憧れの鈴木くんに言われたら女子もどくしかないみたいで、私の席の人がサーっと面白いくらいに引いた。

「ゆうくんまたね!」

そう言って彼女たちは私に謝ることなく、そそくさと自分たちの席や、クラスに帰って行った。

鈴木くんのほうを見ると、彼は私の顔を見ながら、ごめんね。なんてつぶやいてきた。

悪いのは鈴木くんじゃないのに。
むしろ助けてくれたのに。

「大丈夫。」

彼の顔を直視することなく私は短く返事をした。

何で私はまた素っ気なくしちゃうのだろう。
いつもは考えていた言葉がすぐに出てしまうのに、鈴木くんには心で思っていた言葉と全然違うことを伝えてしまう。


鈴木くんが私のために女子に注意してくれたのに。もっと素直にお礼が言えたらいいのに。

鈴木くんになんだか申し訳気持ちになって、私は鈴木くんとは反対の方向に顔を向けた。


ねえ、なんて鈴木くんは私に声をかける。

「桜田さんさ、何か怒ってたりする?」

この言葉を聞いて、鈴木くんのほうに顔を向けた。

鈴木くんは不安げな表情だった。
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