命の贈り物



「何だよ、俺、早く帰りたいんだけど。」




涼はダルそうに、そう言いながら椅子に腰掛ける。




「俺、この間お前にここで言ったよな……?」




睨みつけるように涼を見ているのは樹。



ここは、図書室。




教室につくなり、涼は樹にここまで引っ張られてきたのだ。





「何をだよ?」




「とぼけんのかよ!?」





樹がイライラしている様子は誰が見ても分かる。




「別に。」





「ふざけんな!」




冷静な態度の涼の胸ぐらをつかみ樹はさらに声を荒げて言った。




「お前に、俺は言ったよな!?お前は、俺に言っただろ!?」





『そんな関係じゃねぇよ。』




『手、出すなよ?』





「見損なった。お前がそういう奴だとは思わなかった。」





樹は涼から手を離し、図書室を出ようとした。




「失恋したからって、人に当たってんじゃねーよ。」




その言葉に180度振り返り、再び涼の方を向く。





「お前って、ほんとサイテーだな。」





勢いよく扉を閉めて、樹は図書室をあとにした。





「んだよ……殴ればいいのに……。」




残された涼はそう呟いて、しばらくそこに立ち尽くしていた。





< 155 / 219 >

この作品をシェア

pagetop