命の贈り物



ガラッ


しばらくして図書室の扉が開かれた。




「こんなとこにいた……っ。ショート始まるよ。」




咲が涼のもとに近寄りそう言えば、SHRの始まりを告げるチャイムが鳴る。




「あぁ、今行く。」



涼は咲と共に図書室をあとにする。




「ねぇ、今週の土曜日、映画とか行こうよ!」




咲が笑顔で涼を誘う。




「ん?あぁ……いいけど。」




それを上の空の様子で涼は答える。




「じゃあ、ミサたちと行こう?」




「あぁ、何でもいいよ。」



「……何か、上の空だね。」





涼の態度に不満そうに咲は頬を膨らませる。




「そんなことねぇけど。」



「何かあるんなら話してよ。」




「何もねぇよ。」




冷たい態度に咲はそれ以上は何も言えなかった。




「そっか……。」




教室に着けば、まだ先生は来ていないようで、まだ騒がしかった。





咲は黙って自分の席につく。




涼もまた、何事もなかったかのように席についた。





樹はずっと、涼の方を見ようとはしなかった。



< 156 / 219 >

この作品をシェア

pagetop