命の贈り物
変わらないのは、周りだけ。
私たちの日常は大きく変わっていったと思う。
涼が病気と聞いただけで、苦しくて苦しくて。
‘死’なんて自分とはまだ遠く、かけ離れたことのように思っていた。
人生だって、これからだし。
咲はあの日ずっと泣いていたね。
でも私は、悲しくても涙が出なかったんだ。
ただ、頭の中が真っ白になって。
何も考えられなくなっていた。
「おはよ。」
毎朝、孝志が私を迎えに来る。
でもそこに、涼の姿はない。
咲も休みがちだった。
強く、なれない。
現実から逃げ出しているんだ、咲は。
私も、多分真っ直ぐなんて、向き合えてないと思う。
よく、分からないんだ。
ただそうしている間も私たちの周りはゆっくりと、けれど確実に時間が流れていっているんだ。