命の贈り物


「臓器提供意思表示カードって知ってるかしら?」




「あ、はい。私たち今、倫理でやってて……。ドナーカードのことですよね?」




私が答えると、おばさんは真ん中に天使が描かれている一枚の黄色いカードを出した。




「最近は、デザインも少し違うみたいなんだけど……。持ってるかしら?」





「あ、はい。もちろん……。」



孝志と私は財布から臓器提供意思表示カード……ドナーカードを取り出した。




「おばさん、話が見えないんですが……。」




孝志がそう言うとおばさんはドナーカードを見ながら言った。





「こんなにも誰かが亡くなることを望んでいるなんて……おばさん、最低よね。」





涼の病気、心臓移植で治るものなの……。





最後の、希望なのよ……。



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