命の贈り物
その後のことは、なんとなくしか覚えてない。



孝志に言われ、一緒に病院に来た。



ひかれた人は今、手術中だ。




病院のロビーの椅子に、私たちは座っていた。




「あんな早い時間にどうしたの?」




沈黙を破ったのは孝志だった。




「散歩。」



私はそっけなく答えた。




「そう。珍しいね。」




「まぁ…。」




「今なら、誰もいないよ。」





孝志がそう言ってくれた時、私はおもいっきり泣いた。




涙が渇れるような気がするくらいに。




孝志はずっと黙って、私の話を聞いていてくれた。

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