命の贈り物
荷物という荷物など教科書ぐらいしかない。
簡単に片付いた。
時間がないのは分かっているが美沙は引き出しから便箋を取り出した。
そっと便箋にペンを走らせる。
孝志へ 涼へ
ごめんなさい
ありがとう
美沙
美沙は手紙を手短に書いた。
一緒に学校へ行く約束を守れなくてごめんなさい
そして今までありがとう
またすぐに戻るから……
美沙は便箋を折り畳み、隣の孝志の部屋の窓に挟んだ。
「美沙、急ぎましょう。」
「……うん。」
二人は逃げるようにして、家を出た。
「お母さん、私も話があるから……。」
「うん、分かったわ……。」
そうして人混みの中へと、二人の姿は消えていった。