愛羅武勇×総長様Ⅰ

斎藤君はあたしの携帯をポケットから奪い、大ちゃんに電話をかけ始める。

手を縛られているから、取り返せない。

「やめてって!」

「うるせぇな…お前らそいつの相手してろよ。」

そう言って、電話をかけながら離れていった。

それとともに、近付いてくる複数の不良。


「可愛い顔してんだからさ、殴られたくないだろ?」

それを聞いた途端に、血の気がサッと引く。

「………やめ…て…」

声が出にくい。

こんなに、人が怖いと思ったのは初めてだ。

「俺らも殴りたくないから、動くなよ。」

そう言って、あたしの服に手をかけ始めた不良。

「やだぁっ!!」

誰も助けてくれない。

大ちゃんはここにはいない。

ちゃんと…言うこと聞いてればよかった…っ


「いやっ……大ちゃん助けてっ!!」



―バァンッ!!

暗かった倉庫内が、一気に明るくなり、あたしに跨っていた不良が吹き飛ばされた。


「…っは………」

「あれー、兄貴早かったなー。」

笑顔で、そう言った斎藤君の頭は、暗かった倉庫では見えなかったが、確かに赤色だ。


「美憂!!」

「っ……大ちゃ…」

ギュッと抱き締められ、安心して涙が溢れる。

「怖か……ったぁ…ヒック……」

「バーカ、守ってやるって言っただろ…」

「……あ、りがと…っ…」

あたしをゆっくりと離した大ちゃんは、学ランを脱いで、あたしに羽織らせる。

「遼と槙が後で来る。それまで待ってろ。」

ボソッとあたしの耳元で言った後、立ち上がり、斎藤君の方へ歩いて行く。

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