愛羅武勇×総長様Ⅰ

「ち、ちょっと…!」

「ざけんなっ!ブス!」

後ろで遼の怒鳴り声が聞こえる。綾香は気にしていないようだ。

「あ、綾香?」

「………………」

今度は無視!?

よく分かんない。

何なの?目的が理解できない。


「美憂ってさ、神岡君と付き合ってるんだよね?」

「えっ…?」

「付き合ってるのか聞いてるの。」

「あぁ、まぁ付き合ってるけど…」

綾香にはあんまりこういうこと話したくないんだけどな…

「カッコいいよね、神岡君。」

は…?

何言ってんの、この人。

「何なの、いきなり。」

「別に、大したことじゃないから。」

会話はそれっきりで、沈黙が続く。

さっきまで引っ張られていた手も、いつの間にか離されていて、綾香が別人のように見えた。

ここ数日で分かったこと。

綾香はあたしと2人だけの時はまるで別人。


「美憂、大丈夫?」

「んー……」

「最近神岡君と2人きりになってないんじゃないの?」

そうそう。なってないんだよね…

今でもやっと柚ちゃんと2人の時間なのに。まぁ綾香がトイレ行ってる数分間だけどね…


「大ちゃんと一緒帰ることすら出来ないし…」

「可哀想に…腹黒女のせいで。」

「はぁー………」

毎日一緒に帰ろうとせがむ綾香に、断ることの出来ないあたし。

「今日ぐらいは断っちゃえば?」

「うん…断る。」

今日は大ちゃんと帰ろう。

久しぶりに2人で、一緒に。

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