愛羅武勇×総長様Ⅰ
「離して…」
「………美憂…」
「離してよっ!」
分かんないってどういうこと…?
もう嫌だ。
帰りたい…
逃げたい…ここから
逃げたい――……
涙がポタ、と落ちたときだった。
下を向いていたはずの大ちゃんの顔が、ぼやけるくらい近くにあって。
唇に、暖かい感触。
「…!…んっ…ぁ…ふっ…ん…」
何…?
頭が真っ白になる。
こんなの
やだ………っ!
―ガリッ…
口の中に鉄の味が広がっていく。
「ってぇ…」
「っハァ………っ…」
口切れてる…
「…………悪い…」
「…謝んないでよ…っ」
「………………」
「謝るなら最初からキスなんてしなきゃいいじゃん…!」
泣くあたしを、なぜか大ちゃんは悲しそうな顔で見てる。
「黙れ……」
黙れ…って何?
「何、で大ちゃん…が怒ってんの…っ」
壁に押しつけられた手の圧迫感が強くなる。
「いっ…たぃ…」
何も話さなくなった大ちゃんに、イラつく。
「離してっ」
「無理。」
「離してって言ってるでしょっ!」
「黙れっつっただろ。聞こえなかったか。」
いつもより冷たくて、悲しそうな大ちゃんの目。
泣きたいのはこっちだよ…っ