愛羅武勇×総長様Ⅰ

「じゃあ涙の理由はそいつ?」

「えっ……」

どうして風磨にはお見通しなの…?

「その顔は…図星?」

「あ、いや……あの…」

「話してよ、なんで泣いてたのか。」

真っ直ぐな風磨の瞳から、目をそらす事なんて出来なくて。全部話すことにした。

名前は出さないようにした。

神岡大智って言ったら、きっとみんな、龍泉の10代目総長だって気付くだろう。

知らなかったのはあたしくらいだ。


大ちゃんが女の子と楽しそうに歩いてたこと。

あたしの時とは違ったこと。

「だりぃ」と、言われたことまで、全て話した。

「そいつとは前から仲良かった?」

痛いとこをつかれた…

「…転校生だから…最近仲良くなったばっか…」

「俺とそいつの違いは?」

違いって何なんだろう…?

「分かんない…先に好きになっちゃったんだもん…」

「先に出会ってたのが俺だったら?」

そうだ、先に会ってたのが、大ちゃんじゃなくて、風磨だったら…?

「それも分かんない…」

「俺なら美憂を泣かせたりしない。大事にする
だから……俺と付き合ってよ…」

泣きそうな声で、弱々しく言われて、自分の気持ちが曖昧になってきた。

分からない…

「ねぇ、ダメ…?」

「……………」

どうしよう…

このまま大ちゃんを思い続けても無理なのかな…?

彼女いるみたいだし…

風磨となら傷付かないのかな…?

でも利用はしたくない…



< 44 / 169 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop