愛羅武勇×総長様Ⅰ
「藍沢…」
「神岡?何でてめぇがここにいるんだよ」
この声はほんとに風磨?
いつもと違う、ドスの利いた声。
それに負けないくらい、大ちゃんの低くて、かすれた声。
会ってしまった。
総長同士が。
睨み合ってる大ちゃんと風磨。
威嚇したような目。
どちらも劣らないくらいの威圧感。
「あぁ…美憂泣かせてんのはお前か…」
「あ? てめぇ誰に向かって口聞いてんだよ。」
「分かんねぇか?神岡、お前しかいねぇだろ。」
風磨じゃない。
大ちゃんじゃない。
この人たちは誰?
あたしと話してるときと違う声、目つき、言葉遣い。
あたしの知ってる2人じゃなかった。
「美憂、行くよ」
風磨は、さっきとは違う穏やかな口調で、あたしの腕を優しくひいた。
「行くな、俺のそばにいろ。」
いつものような、俺様口調でそう言い、もう片方のあたしの腕をひいた大ちゃん。
「その手離せよ、俺の美憂に触んな。」
「俺の美憂? 笑わせんな。彼氏面してんじゃねぇよ!」
「彼氏面? しちゃ悪いかよ。俺、美憂の彼氏なんだけど。」
風磨の言葉を聞いて、大ちゃんは驚いたような顔をしてあたしを見た。
何も言わずに目を逸らすと、動揺した素振りも見せず。
「だったら奪うまでだ。」
そう言った。