愛羅武勇×総長様Ⅰ
すぐに分かってしまったらしい。
嬉しかった。
2人が分かってくれて。
「次の授業サボろっか。」
「うん…」
すぐに頷いた。
隣の席に座っているのは間違いなく大ちゃん。
ピンクメッシュにオレンジ色の髪。
見間違いなんて有り得ない、槙と遼もいる。
自分の席までゆっくりと歩いて行き、教科書を出すこともせず、ただカバンを置いて。
目も合わせずに、3人の横を通った。
休憩時間なのに、こんなに静かだった理由が分かった。
あの3人がいるからだよね?
みんなからしてみれば、暴走族とは関わりたくないだろうから。なるべく目立たないように、目を付けられないようにって…
よく見ると、窓の方から大ちゃん達を見ている先輩が何人かいる。
女子からしてみれば、暴走族は強くてカッコいい、憧れの的。
「美憂、屋上行こうか。」
久しぶりの屋上だ。
サボること自体が、あんまりなくて、いつも授業中は寝てたから。
「美憂、行くぞ。」
海斗にそう言われ、柚ちゃんに手を引かれた。
「あ、うんっ…」
ドアの前にいた何人かの先輩を、海斗が押しのけて、歩いて行く。
「篠原君だよっ」
「カッコいいー……」
「話しかけてみる?」
「えっ、無理無理!」
窓から教室内を覗いてた先輩も、ドアの前にいた先輩も、小さな声で海斗の話をする。
チラチラと見ながら、顔を赤くしてる人までいた。