愛羅武勇×総長様Ⅰ
「…海斗モテるね。」
柚ちゃんが、少し不機嫌な声でそう言った。
「は? 何言ってんだよ、お前。」
「聞こえてなかったんだ…」
「何が?」
「何でもない!」
そんな小さな事で顔を赤くする柚ちゃんは、ほんとに可愛い。
「顔赤いぞ、柚。」
「何でもないってば!」
「ゆ、柚ちゃん…」
「変なやつ…」
「うるさいっ!」
―ガチャ…
「おぉ、天気良いなっ!」
天気が良いと言っても、今は冬なわけで、日なたへ座っても寒いくらいだった。
「よし美憂、昨日何があったのか話しなさい。」
屋上について、座ったとたんに柚ちゃんに、そう聞かれた。
「あー…うん。あのさ、柚ちゃんは知ってるでしょ? あたしの彼氏。」
「え!美憂彼氏いたのかよ!?」
「海斗、うるさい。」
「はい…」
「知ってるよ、助けてくれた人でしょ?」
「うん。」
「名前は?」
海斗にそう聞かれ、少し戸惑ったが、隠すのは到底無理だろう。
「藍沢風磨…」
「へぇー…藍沢風磨……ん?…藍沢、風磨!?」
「煩いってば。」
「いやいや、藍沢風磨って白龍の総長だろっ!」
「うん、そうだよ。」
「まじかよ………うわー……ってことは…」
海斗はこの先の展開が分かったみたいだ。
「もしかして喧嘩か?」
「…………うん…」
「神岡君と藍沢君が?」
小さく頷いて、下を向いた。
「そっかー……で、美憂はどっちを選んだの?」
涙が溢れて話すことが出来ない。
あたし最悪だもん。
やってることは健ちゃんと何の変わりもない。
「……風磨…っ」
「藍沢を選んだのか?」
それ以上話せなかったあたしは、必死に頷く。
「美憂が決めたなら、あたしは反対しないから。」
「俺も。 美憂が選んだなら応援する。」