愛羅武勇×総長様Ⅰ
違う、そんな事で泣いてるんじゃない。
そう言いたくて、必死に首を横に振る。
「美憂…?」
「……大ちゃん…が……好きっ…」
「どういうことだよ?」
「風磨が…っ…前の、あたしに似、てて…っ…」
"俺を捨てる…?"
悲しい顔してそう言われたとき、風磨を裏切ることなんて出来ないって。
自分の中で、同情が生まれた。
ほんとは大ちゃんを選ぶつもりだったのに…
あんな顔見たら、手を振り払えなくて。
「同情してるわけ?」
柚ちゃんが優しくそう聞いた。
「……っ…」
「中途半端な気持ちなら止めろ。同情なんかして、後で辛くなるのは相手の方だぞ。」
分かってる。
分かってるんだよ。
あの時大ちゃんの手を振り払ったことを、後悔した。
「自分の気持ちに正直になれ。嘘ついてまで同情なんかすんじゃねぇ。」
「…ご、めん…っ……」
海斗の手があたしの頭の上にのって、ポンポンと優しく叩く。
「美憂には幸せになってもらいたいからな。大事な親友だし。」
「あたしも幸せになってもらいたいんだからね。美憂、ハッキリさせなきゃダメだよ。」
柚ちゃんは、気合いが入ったように勢いよくそう言った。