シルバーブラッド ゼロ
試薬室は真っ直ぐ行った廊下の突き当たりにあって、難なく見付けることが出来た。

緊張しながらカードを使ったのに、簡単にドアのロックは外れた。

浩之はほっとする。

こういう、上手くいくはずのところで躓くのって、怖いから。

浩之は、中に入って周りを見渡した。

横に細長い部屋で、薬品庫や、保管ケースが、背中あわせに何列にも置かれてある。

馴染みのある、試験管やビーカー、シャーレやピペット。

そういうものが入った保管ケース。

褐色瓶やブルーのプラスチック製の容器が入った薬品庫。

棚に無造作に置かれたチップのケース。

その奥に、ドアと並行するように本棚があった。

試薬や機器のカタログらしい本の詰まったその棚は、びっしりと端から端まで占めている。

これが、動くのか?

隅から、よく、本と本棚を観察してみた。

仕掛けと連動してそうなものは見つけられない。

IDカードを使うところで、何かの操作が必要だったのかも知れない。

入り口に戻ってドアが開くと、向こう側にエイジュがいた。
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