シルバーブラッド ゼロ

彼の亡骸を乗り越えてゆくと、赤く塗られたドアに辿り着いた。

今までの白いドアとは全く違うその色に浩之の意識は奪われてしまう。

そういう絶妙の色調に、その色は塗られていた。まるで、浩之の好みを熟知した者が塗ったかのようで、怖いほど。

エイジュは、そのドアの鍵を打ち抜いた。

電子ロックではなかった。ここだけが、電子ロックが作動しない事態を想定して作られているみたいに、普通の鍵が付けられていた。

例えば、組織を乗っ取る為に他の機能をマヒさせて、それでも、ここの鍵を持っている人間は、ここに入れる。

例えば、その鍵を持っている人物は、人の好きな色を乱用して喜んでるヤツ。

ドアを開けると、エイジュは浩之を振り返った。