シルバーブラッド ゼロ
大理石の床に弾かれたナイフが、冷たい音を立てた。
 
その音に、浩之はハッとした。

同時にある記憶が甦ったのだ。
 
浩之は英樹に焼き殺されかけた直後、ショックでしばらく口がきけなくなった。
 
その時のことを、今、浩之はまざまざと思い出した。
 
風景も音も、全てが歪んで浩之の五感に届いていた。

現実の中で、重苦しい夢の中を漂うに呼吸していた浩之を、目覚めさせたのは、この音だった。
 
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