シルバーブラッド ゼロ
「あいつは、火をつけるものを探しに行って、面倒臭くなったか、どうでもよくなったんだよ。

それで、そのまま出て行ったんだ。

オレはその時十二歳だったんだよ。

英樹が今にも戻って来て、そしたら一間の終わりだと思った。

兄貴が戻って来なくても、石油が、自然発火したかもしれないしね。

とにかくオレは、母親が見つけて助け出してくれるまでに、死ぬほどの恐怖を味わわされたんだ」
 
浩之が、今そのことをどう思っているのか、推し量るのは難しかった。
 
冷静な、楽しそうにさえ聞こえる声で、淡々と喋るから。

「うそ、でしょ?」

「うそって、何が?」

「英樹がそんなことしたなんて」
 
彼女は、信じていいのかどうか分からないといったような、引き攣った表情で言った。
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