シルバーブラッド ゼロ
つまりそれだけ接近して、傍にいるって事なのだが。

浩之はその事実に改めて気付かされて、全身が不快にザワつくのを感じた。
 
手が自由になったらどうしてやろう。
 
不快さが、ほとんど殺気に変わってくる。
 
けれど、そのささやかな復讐心は、すぐ断ち切られてしまった。

「何をしている?」
 
ひょろりとした長髪の方の男が近付いて来て、相棒の方を覗き込んだ。

尻尾をフリフリして、浩之のロープを解こうとしていた短髪の男が、ハタと手を止めて顔を上げた。

ああ、もうちょっとだったのに。
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