渇望
自宅に帰り、さすがに眠たい体をベッドへと投げた。


サンタの格好をしたスヌーピーは、ジュンそのままな気がしてならない。


考えたってどうすることも出来なくて、とりあえず体を起こし、冷蔵庫に向かった。


そこでふと、テーブルの上に何かあることに気付き、あたしは眉を寄せてしまうんだけど。



≪メリークリスマス!≫


たったそれだけの走り書きと共に、包装すらされていない箱が置かれている。


中を開けてみると、指輪。


サイズから見ても、ピンキーリングだろうけど。


右手の小指に嵌めると、ジャストサイズなのには驚かされて、だから笑いながら涙が出そうになる。



「…瑠衣…」


どうして瑠衣は、こんなことをするのだろう。


こんなことでまた、あたしは彼を許してしまうのだろうか。


未だに連絡なんてない。


けれど、こんな日にひとりっきりで眠るには十分すぎるものだったろう。







その日あたしは、瑠衣から貰った指輪を小指に嵌め、ジュンから貰ったぬいぐるみを抱き締めて眠った。


あたしは一体、どちらを大切にしたかったのだろう。


本当はあの時、引き返すべきだったのにね。


今、あの指輪はどうなったろう。

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