渇望
一年の始まりと終わりの境目なんて、越えてみれば呆気ないものだ。


あたしはただ、無駄に生きる日々を繰り返しているだけのこと。


そして新年を迎え、一週間ばかりが過ぎた頃だった。



「んじゃあ、行きますか。」


ジュンの車の助手席に乗り、あたし達は揃って地元に戻る。


と、いっても、彼のおばあちゃんのおうちに遊び行く、というだけのことだが。


ぶっちゃけ午前中から行動するなんて、力も入らない。



「でもさ、百合どういう心境の変化だよ?」


「アンタがしつこいからよ。」


はいはい、とジュンは言う。


実際はしつこくなんて誘われてないけど、こういうところはこの人の優しさだろう。


四駆の車窓から、あたしは流れる景色を見つめ、煙草ばかり吸っていた。



「実家、どうすんだ?」


「寄らなくて良いよ、別に。
それに向こうだってあたしが帰って来ちゃ迷惑でしょ。」


ジュンは正面を見つめたまま、肩をすくめる。


あたし達の地元は車で2時間ほどで、高速に乗ればそう遠くはないのかもしれない。


けれど、約2年ぶりという現実には、さすがに気が重くなってしまうが。



「だよなぁ。
お嬢様のくせに今は体売ってるしな。」


おどけたように言う彼に、うっさい、とあたしは口を尖らせた。


お嬢様だなんて冗談にもならない。


けれど、世間一般から見れば、きっとあたしはそれと呼ばれる部類の家の娘だろう。


まぁ、もう関係ないけれど。

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