渇望

復讐の矛先

彼がうちに来た理由くらい分かっていたから、向かい合わせに座ることも、ひどく居心地が悪くて堪らない。


せめて差し出したコーヒーには口をつけてほしいものだけど。



「ジュン、聞きたいことあるんでしょ?」


沈黙に耐えきれなくり、切り出したのはあたしだった。



「瑠衣のことなら、あれは別にカレシとかじゃないから。」


言ったのに、彼は最後の煙を吐き出しながら、煙草を消す。


何であたしはこんな言い訳染みた台詞を並べているのだろうかと思うけど。



「じゃあアイツと切れても問題ないんじゃない?」


「…えっ…」


「あの瑠衣って男にとって、お前の代わりならいくらでもいるだろ。」


けど、とジュンはあたしを見た。



「お前の代わりは誰もいないし、シャブ売ってるような男といて何になるんだよ!
もしもってこと考えろよ、パクられたらどうすんだよ!」


捲くし立てるように言った彼は、苦々しそうに舌打ちを吐き捨てた。


ジュンが言っていることは正しいし、そんなこともわかってる。


それでも今日も、あたしの小指にはあの指輪があった。



「金のためなら何をしても良いわけ?」


呟かれた台詞が宙を舞う。


それはまるで、この街の人全てに問うているような言葉だった。



「それってホストの台詞じゃないね。」

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