渇望
女を店に呼ぶことは、少なからず金のためであり、ホストのジュンがそれを言って良いとは思えない。


けれどあたしは金のために体を売っているから、彼を責めるつもりはないのだけど。



「瑠衣のこと、悪く言わないであげて。」


その台詞が、どれほどジュンを傷つけるかも知っている。


それでも、こんなことは聞きたくないのだ。



「シャブ売ってる男がそんなに大事?」


ジュンは立ち上がり、詰め寄ってくる。



「カレシでもないあんなヤツが何より大切だってこと?」


こんなにすごい剣幕の彼を見るのは、きっと初めてだったろう。


アンタだってカレシじゃないじゃん、とは、この状況で言えないけれど。


あたしのことなんか愛さないでほしいし、優しくもしないでほしい。


ジュンに想われていると知る度に、拭えない罪悪感に苦しめられるのだから。


無理やりにでも押し倒してくれれば良いのに。


なのに彼は、そんなことはしない。



「言いたいことそれだけなら、出てって。」


見上げると、ジュンは唇を噛み締めて目を逸らした。



「仕事、行かなきゃいけないの。」


更に付け加えると、彼は一瞬躊躇いを見せながらも、無言のままに部屋を出た。


閉まっていく扉を見つめながら、どうしてこうも、物悲しさに包まれてしまうのか。


ジュンには、体を売ってる女なんか似合わないのに。


そう思っている反面で、何故か捨てられた気分にさせられた。


心底欲張りな女だと、自分でも思う。

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