渇望
アキトは小馬鹿にするように言った。


だからまた、先ほど仲裁の意味はなくなり、あたしはひとり、肩を落とす。


理由は知らないが、今日はそれぞれに腹の虫の居所が悪いらしい。



「瑠衣はただ、俺より優位に立ってりゃ満足なんだし。
子供染みてるのはどっちかな。」


「突っかかることしか出来ねぇヤツに言われたくねぇけど。」


これならまだ、外で殴り合ってくれてる方がマシだ。


空気が悪くなるばかりの会話も、ここまでくるとさすがに苛立ってくる。


けれど、いい加減にしてよ、とあたしが言うより先に、鼻で笑ったのはアキトだった。



「やっぱ血が繋がってるだけあって、俺らは仲良く出来ないねぇ。」


血が、繋がってる?


突然に、しかも一体何を言っているのか。


瑠衣は心底驚いた顔をし、アキト、と制止してからあたしの顔を見た。



「あぁ、まだ百合に言ってなかったの?
別に良いじゃん、今更隠すことでもないんだし。」


確か初めて3人で飲んだ時、このふたりは互いをひとりっこだと罵っていたはずだ。


それに顔も似てないし、何の冗談なのかわからない。



「俺と瑠衣ね、兄弟なんだ。」


なのに、そんなあたしにアキトは、目元だけで笑い、わざと教えるように話してくれる。



「父親が一緒でぇ、まぁ、半分だけの繋がりね。」

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