渇望
『まあちゃんもちょっと前まで別の卓にいたんだけど、自業自得だから放っとけば良いって帰っちゃって。』


つまりはあたしまで見捨てれば終わりと言うことか。



「わかった、これから行く。」


そして電話を切った。


ため息を混じらせていると、瑠衣がひどく冷たい瞳を投げてくる。



「行くなよ。」


「…えっ…」


「別に他人のことなんかどうだって良いだろ!」


確かにそうかもしれないけれど。



「…でも、すぐ戻ってくるし…」


「ここにいろっつってんだろ!」


どうすれば良かったろう。


それはつまり、こんな悲しそうな顔をしている瑠衣より香織を選ぶということ。


真綾が自業自得だと言うのは当然なのかもしれないけれど、いい加減、どうにかしなければならない時が来ている。



「ごめん、行く。」


瑠衣を振り切ることに、罪悪感を覚えた。


それでも見ないようにし、部屋を出て、急ぎタクシーを拾った。


ジュンとはどんな顔して会えば良いかわからないけれど、色んな事に不安になる。


消えることのないネオンと、人の群れ。


息を吐き、あたしはオーシャンの扉を開けた。

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