渇望
香織は今もクリスタルを辞めることなく、相変わらずオーシャンに通って金を落としているという話は、色んな人から聞いた。
けれど、事務所にもホストクラブにもほとんど顔を出さないあたしと会うことはない。
いつの間にか、桜が見頃の時期となっていた。
街中では移り変わる四季にさえ気付けないのに、風が春の匂いを運んでいるかのよう。
瑠衣はいつも何かに怯えていた。
あの日、彼を振り払って香織の元に行った罪悪感もあり、あたしはそのほとんどの時間をこの部屋で過ごしている。
「相変わらず殺風景な部屋だね。」
アキトがやってきたのは、そんな時だった。
瑠衣の部屋に彼が来たことなんて今まで一度もなかったし、それより先に、あの日からふたりはどうなったのかと不安になる。
瑠衣は無視して出窓で酒を飲んでいて、アキトも気にすることなくソファーに座った。
その距離感が、決して埋まることのないふたりの溝のようにも見える。
「ねぇ、3人で花見行こうよ!」
無邪気な言葉とは裏腹に、アキトは試すような瞳を向けている。
きっと彼は瑠衣が桜が嫌いだと知ってて、わざと言っているのだろうけど。
「あっきーが裸踊りでもするってんなら考えてやるけど。」
嘲笑うように瑠衣は言う。
もう、あたしの前でも醜い憎み合いを隠すことさえしてくれない。
アキトは肩をすくめ、あたしへと視線を移した。
「百合、桜の木の下には何が埋まってるか知ってる?」
けれど、事務所にもホストクラブにもほとんど顔を出さないあたしと会うことはない。
いつの間にか、桜が見頃の時期となっていた。
街中では移り変わる四季にさえ気付けないのに、風が春の匂いを運んでいるかのよう。
瑠衣はいつも何かに怯えていた。
あの日、彼を振り払って香織の元に行った罪悪感もあり、あたしはそのほとんどの時間をこの部屋で過ごしている。
「相変わらず殺風景な部屋だね。」
アキトがやってきたのは、そんな時だった。
瑠衣の部屋に彼が来たことなんて今まで一度もなかったし、それより先に、あの日からふたりはどうなったのかと不安になる。
瑠衣は無視して出窓で酒を飲んでいて、アキトも気にすることなくソファーに座った。
その距離感が、決して埋まることのないふたりの溝のようにも見える。
「ねぇ、3人で花見行こうよ!」
無邪気な言葉とは裏腹に、アキトは試すような瞳を向けている。
きっと彼は瑠衣が桜が嫌いだと知ってて、わざと言っているのだろうけど。
「あっきーが裸踊りでもするってんなら考えてやるけど。」
嘲笑うように瑠衣は言う。
もう、あたしの前でも醜い憎み合いを隠すことさえしてくれない。
アキトは肩をすくめ、あたしへと視線を移した。
「百合、桜の木の下には何が埋まってるか知ってる?」