渇望
「でもね、あたし達はお互いを優先出来ないの。
大切なのに一番に出来なくて、でも怖いから一緒にいたいだけ。」


初めて誰かに話したのかもしれない。


脈絡もなく、ただ吐き出すようにしか言えないあたしの言葉を、彼女はそれでも真剣に聞いてくれた。



「相手と向き合って、ちゃんと思ってること言い合うねん。
譲れる部分と譲れん部分を擦り合わせて、そしたら例え一番やなくても怖くないよ。」


あぁ、あたしは瑠衣のことを何も知ろうとはしなかったんだ。



「でも、そうやって考えてるってことは、その人は百合りんにとって意味のない存在ちゃうってことやん。
悪い癖やで、全部難しく考えようとするん。」


頬杖をついた真綾は、いつだって笑っている。



「それに、ジュンも心配してたし。」


「うん、わかってる。」


それでも、ジュンにだけは頼れなかった。


きっとあの人のことだから、助けてと言えば本当に助けてくれるだろうけど。


でも、だからこそ、半端に迷ったままでは縋れなかった。



「まぁ、たまにはオーシャンにも顔出してやりぃ?」


「そうだね。」


瑠衣は今、どんな答えを探しているだろう。


何かを見つけたり出来ているだろうか。



「…恋愛、かぁ。」


呟いた真綾の言葉が耳を通り過ぎたが、問い返しはせず、あたしは噛み締めるように呟いた。



「いい加減、聞くべきなのかな。」

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