渇望
発見してしまったのは、母さんの日記。


そこには父さんの名前ばかりが並べられ、そしてどれほど愛しているのかという、女としての日々が記されていた。


それは父さんが死んでからもずっと。


怒りだとか、汚らわしいだとか、そんな簡単な感情ではなかった。


母さんは瑠衣に抱かれていたんだ。


愛した男の姿を重ね、呼んでいたのが誰の名前だったのかなんて、どうでも良い。



「…アンタ、もしかして…」


一体どこからが嘘だったのだろう。


もしかしたら、父さんの葬儀にやってきたあの日から、これだけを目的として近付いていたのだろうか。



「馬鹿な弟ほど可愛いって本当だなぁ、あっきー。」


それが初めて見た、瑠衣の嘲笑の混じる笑みだった。



「母さんに何をしたんだ!」


「おいおい、何言ってんだよ?
雅子さんは可哀想な俺に援助してくれて、だから礼をするのは当然だろう?」


瑠衣は母さんから金を受け取り、そして抱いていたんだ。


狂ってるとしか思えなくて、想像するだけで嗚咽が混じる。



「じゃあ、お前は母親のために何をしてやった?」


見下すような瞳に、言葉が出ない。



「今まであの女が生きてたの、誰のおかげかわかって言ってんの?」


あの女、と瑠衣は吐き捨てた。


父さんと同じ顔をして、目を細めるように母さんを侮辱したのだ。


ぞわぞわと全身の毛穴が開くように怒りが込み上げてくる。

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