渇望
けれどそれも、通過点でしかなかったのかもしれない。


父親を奪った女の家族に対する復讐でさえ、その冷たすぎる瞳には映っていなかったのだろうと、今では思うことだけど。


もう高校には通っていられなかった。



「さぁ、ゲームの始まりだ。」


それさえ遊び事だと言うように。



「俺を殺したいと思うなら、ここまで来いよ。
まぁ、精々楽しませてくれよな。」


ただ真っ直ぐに、標的を撃ち落とすハンターのように、瑠衣だけを見ていた。


どうやったら同じ苦しみを味わわせることが出来るだろうと、まるで取り憑かれたかのようにそればかり考えていた。


瑠衣が泣いて許しを請うように懇願する姿だけが見たかったんだ。







幕切れは、呆気ないもの。


人を殴ったことさえなくて、だから当然の結果だったのかもしれないけれど。


何十人もの瑠衣の仲間に囲まれた。


きっと彼はそいつらさえ兵隊だとしか思っていなかったのだろうが、でもその足元にさえ届かない。



「瑠衣さん狙うとか、お前馬鹿なんじゃね?」


「あーぁ、綺麗な顔が台無しだ!」


口々に言う男達の後ろで、瑠衣は一段高い場所から傍観していた。


例えば野球を観戦するように、時に笑いながら、欠伸さえも混じらせながら。


散々殴られ、押さえつけられ、地面に顔を擦られながら、屈辱的な力の差を見せつけられる。


もう諦めてしまいたかった。



「瑠衣さーん、コイツの腕折っちゃいましょうよー!」

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