渇望
困ったように笑う彼女を見て、まさか、と思った。
「うち昔から、好きな人がおるヤツばっか気になるねん。
んで、そいつに幸せになってほしくて応援ばっかしてたら、気付いたらカレシもおらへん、ってな。」
じゃあ真綾はやっぱり、ジローのことが好きということか。
報われる保証もなく、それでも傍にいてあげたいと思う気持ちを否定は出来ない。
ただ、その真っ直ぐさが眩しいばかり。
詩音さんへの気持ちを知ってて、でも色を掛けられていたまりんちゃんを慰めてもあげて。
なのにそれが一方通行でしかない、というのは悲しい話だ。
「こっちに来てすぐの頃は、友達もおらん知らへん街での言葉の壁とか、そういうのでちょっと孤独になっててん。
別に地元に未練あったわけちゃうけど、やっていけるんかぁ、って不安にもなってて。」
「…うん。」
「けど、ジローが頑張れよ、って言ってくれてな。
やからホンマはあんなんやけど悪いヤツちゃうし、うちは多分、詩音さんのこと好きなジローがえぇねん。」
ほかほかの心と、屈託のない笑顔。
あの街でこういう顔して生きている人が、一体どれだけいるだろう。
「アイツも必死やしさぁ、あんま毛嫌いしてあげても可哀想やん?」
「…そう、だね。」
真綾は多分、その想いをジローに伝えるつもりはないのだと思う。
そしてジローもまた、これからもずっと詩音さんの傍にいるつもりなのだろう。
じゃあそんな詩音さんの瞳には、一体何が映されているのか。
「てか、店での恋愛ってご法度なんじゃなかった?」
冗談交じりに返すと、そういや忘れてたわ、と彼女も笑う。
これからのことで不安にならないと言えば嘘になるけど、でもそれを口には出せず、それぞれに自分の道を模索していたのだろう。
「うち昔から、好きな人がおるヤツばっか気になるねん。
んで、そいつに幸せになってほしくて応援ばっかしてたら、気付いたらカレシもおらへん、ってな。」
じゃあ真綾はやっぱり、ジローのことが好きということか。
報われる保証もなく、それでも傍にいてあげたいと思う気持ちを否定は出来ない。
ただ、その真っ直ぐさが眩しいばかり。
詩音さんへの気持ちを知ってて、でも色を掛けられていたまりんちゃんを慰めてもあげて。
なのにそれが一方通行でしかない、というのは悲しい話だ。
「こっちに来てすぐの頃は、友達もおらん知らへん街での言葉の壁とか、そういうのでちょっと孤独になっててん。
別に地元に未練あったわけちゃうけど、やっていけるんかぁ、って不安にもなってて。」
「…うん。」
「けど、ジローが頑張れよ、って言ってくれてな。
やからホンマはあんなんやけど悪いヤツちゃうし、うちは多分、詩音さんのこと好きなジローがえぇねん。」
ほかほかの心と、屈託のない笑顔。
あの街でこういう顔して生きている人が、一体どれだけいるだろう。
「アイツも必死やしさぁ、あんま毛嫌いしてあげても可哀想やん?」
「…そう、だね。」
真綾は多分、その想いをジローに伝えるつもりはないのだと思う。
そしてジローもまた、これからもずっと詩音さんの傍にいるつもりなのだろう。
じゃあそんな詩音さんの瞳には、一体何が映されているのか。
「てか、店での恋愛ってご法度なんじゃなかった?」
冗談交じりに返すと、そういや忘れてたわ、と彼女も笑う。
これからのことで不安にならないと言えば嘘になるけど、でもそれを口には出せず、それぞれに自分の道を模索していたのだろう。