渇望
流れゆく人の中で、彼はいつもあたしだけを見つけ出してくれていた。


真っ直ぐに手を差し伸べてくれ、「どうしたの?」とひどく悲しそうな瞳が落とされる。



「…アキ、ト…」


「なぁ、どっか痛いの?
それとも何かあった?」


首を振ると、また涙が溢れてくる。


瑠衣と同じ血を分けた、でも全然違う人。



「とりあえず、立てる?
こんなとこいたって体冷えるし、瑠衣なら…」


そこまで聞いた瞬間、あたしは耳を塞いだ。



「…嫌だよ、助けてっ…」


まるでパニックになったように、助けて、助けて、と繰り返す。


アキトはひどく困惑した様子で、



「ちょっ、百合?」


その瞬間、あたしは意識を失った。







夢を見た。

みんな笑顔だった。




そこはひどくあたたかな場所で、
だからずっとここにいたかった。




怖い鬼さんもいない。

黒いオバケもいない。




真っ白のワンピースを着た子供が、
本当に幸せそうな顔で笑っていた。





上手く思い出せない名前があった。






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