渇望
7月も半ばを迎える頃、ジローから一本の電話が入った。



『真綾が倒れたんだ。』


それを聞き、あたしは飛び出していた。


このままだと命に関わるだとか、悔いを残したくないからだとか、今までの会話が頭の中で湧き出し続け、どうやって病院まで駆けつけたのかも思い出せないけれど。


とにかく、気が気じゃなかった。








「真綾!」


と、勢い良く病室の扉を開けた瞬間、目の前の光景にひどく困惑してしまう。


丸椅子に座っているジローと、あたしを見てぎょっとしている真綾。


彼女は点滴の管に繋がれ、ベッドに寝かされていたのだが、余程の緊急事態というわけでもなさそうで、何だか肩透かしを喰らった気分だ。



「百合りんやん!」


起き上がろうとする真綾を、こら、とジローが制止していた。


彼女はバツが悪そうな顔で笑った後で、ビックリしたやん、とあたしに言った。



「ビックリしたのはあたしの方だっての!」


その傍まで近づくと、改めてちゃんと見た真綾はひどく顔色が悪い。


少し前に会った時よりずっと細くなっていた腕には、痛々しいまでに繰り返されたのだろう、注射の痕。


正直、目を背けてしまいたくなる。

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