渇望
「でもさ、何か出会いって不思議だよね。」


ソファーに腰を降ろし、あたしは感慨深くも煙草を咥えた。



「瑠衣と出会わなきゃ、アキトともこうやって話すことだってなかっただろうし。」


言った瞬間、彼は眉を寄せるようにして目を細める。


が、それに気付くこともなかったあたしは、自分のライターを探してバッグを漁っていると、ふと、人影に気付いて顔を上げた瞬間、



「なぁ、ホントにそう思ってる?」


ひどく冷たい瞳のアキトは、あたしを見下ろすように佇んでいる。



「……え?」


「あの時、俺と百合がぶつかったの、ただの偶然だなんて思ってたんだ?」


彼は一体何を言っているのだろう。


指に挟んでいた煙草は容易く奪われ、フローリングに投げられる。


気付けば逃げ場所さえ失っていて、意志とは別に、体が強張っていくのがわかった。



「ちょっと、その目は怖いって。」


笑って流そうとしても、状況なんて変わることはない。



「百合はさぁ、俺のことわかってなさすぎ。」


ソファーに貼り付けられるような体制で、アキトの瞳が落とされる。


だから今更になって、彼はあたしに絶対何もしないなんて馬鹿なことを考えていた自分には呆れてしまう。



「俺だって男だよ?」

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