渇望
意味のない出会いなんてない、という言葉を聞いたことがあるけれど。


先に出会ってしまったのが瑠衣だったことに、意味があったのかはわからない。


アキトの本心は、いつもあの貼り付けた笑顔の奥に隠されていたね。


あの頃、誰の想いにも気付けなかった。


愛も、憎しみも、何もかもがネオンの色に覆われていたから。


なんて、今となってはそれも言い訳なのかもしれないけれど。







相変わらず何もない部屋で、瑠衣は切なそうにあたしを抱いた。


それはつまり、受け入れていたのかもしれないけれど。


彼はいつも、支配欲を剥き出しにする。


そして支配されているあたしは、そこに心地よさを感じてしまうのだ。


ただ、こんな関係の中に、居場所を求めていたのかもしれない。



「百合。」


気まぐれに呼ばれた名前は、宙を舞う。


痛々しいまでの瞳と、そして彼の腹部の古傷は、更にあたしを悲しくさせた。


外はこんな時間なのに明るい。


それは街のネオンの輝きで、夜が消えたのか昼が消えたのかわからなくなる錯覚に陥ってしまいそうになる。


瑠衣の腕の中で、あたしは意識を手放した。

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