渇望
行かないで
8月も中頃になった時、真綾がもうすぐ退院するのだという電話が入った。
もちろん、今後も継続的に通院はしなければならないけれど、でも合併症もなかったようで、それを聞き、あたしは安堵と同時に喜んだ。
似合わない花束を買い、お見舞いのために病院に向かうと、玄関口の喫煙スペースで、彼と遭遇してしまう。
「百合!」
ジローだった。
まぁ、この男から電話を貰ったのだから、ここで会うことも予想していたけれど。
「何か、相変わらず血色の悪い顔してるね。」
「相変わらず黒い色したヤツにだけは言われたくないけどね。」
そんな嫌味を言い合いながらも、もう昔のように、互いに嫌悪感は抱かない。
真綾に会う日は、決まって空が抜けるように青く、何だか久しぶりに陽の光を浴びた気がしたが。
あたしが隣に腰を降ろしたと同時に煙草を消したジローを見計らい、気になっていたことを問うてみた。
「ねぇ、アンタ今もまだクリスタルで働いてんの?」
「いや、辞めたよ。」
ある程度予測はしていたものの、まさか本当にこの男が、詩音さんから離れるとは。
何だかあの頃のことが、もうずっと昔のように感じてしまう。
「じゃあ、これからどうすんの?」
そのことなんだけどさ、とジローは、あたしを見た。
「俺さ、真綾と一緒にこの街から出ようと思ってんだ。」
もちろん、今後も継続的に通院はしなければならないけれど、でも合併症もなかったようで、それを聞き、あたしは安堵と同時に喜んだ。
似合わない花束を買い、お見舞いのために病院に向かうと、玄関口の喫煙スペースで、彼と遭遇してしまう。
「百合!」
ジローだった。
まぁ、この男から電話を貰ったのだから、ここで会うことも予想していたけれど。
「何か、相変わらず血色の悪い顔してるね。」
「相変わらず黒い色したヤツにだけは言われたくないけどね。」
そんな嫌味を言い合いながらも、もう昔のように、互いに嫌悪感は抱かない。
真綾に会う日は、決まって空が抜けるように青く、何だか久しぶりに陽の光を浴びた気がしたが。
あたしが隣に腰を降ろしたと同時に煙草を消したジローを見計らい、気になっていたことを問うてみた。
「ねぇ、アンタ今もまだクリスタルで働いてんの?」
「いや、辞めたよ。」
ある程度予測はしていたものの、まさか本当にこの男が、詩音さんから離れるとは。
何だかあの頃のことが、もうずっと昔のように感じてしまう。
「じゃあ、これからどうすんの?」
そのことなんだけどさ、とジローは、あたしを見た。
「俺さ、真綾と一緒にこの街から出ようと思ってんだ。」