渇望
「ほらぁ、百合りんも何か言うてやぁ!」


「てか、あたし的にはどっちも馬鹿だとしか思えないけどね。」


何でやねん、と真綾は頬を膨らませる。


が、ジローはそんな怒るなって、と言いながら、なだめるように彼女の頭を撫でていた。


とても微笑ましくて、きっとこれならふたりは大丈夫だろうと思えてくる。


少しだけ、羨ましくもなってしまうが。



「まぁ、あたし邪魔みたいだし、そろそろ帰るわ。」


嫌味のように言って立ち上がると、真綾だけがまた顔を赤くしていた。


だから満足して帰ろうとした時、百合、とジローによって呼び止められる。



「何かあったら、いつでも俺らに言って。」


更には彼女まで、



「そうやで、百合りん!
うちらはフォーエバーラブな友達やねんから!」


フォーエバーラブな友達ってのが何かはよくわからないけれど。


でも、ただ嬉しくて泣きそうになった。


こんな街で出会った人間なんて、みんな大嫌いだと思っていたはずなのにね。



「んじゃあ、後のことは全部ジローに任せとくわ。」


意味ありげに言ってみれば、了解でーす、と彼だけが笑った。


何のことだかわからずにいる真綾を無視し、じゃあね、と言ってあたしは、病室を後にする。


人の縁なんて、つくづく不思議なものなのかもしれないね。

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