渇望
わかってるよ、とジュンは言う。



「百合って女は最低で、自己中で、すぐキレて。
もうホント、すげぇ腹立つんだけど。」


でもさ、と滑らされた瞳。



「実はただ強がってるだけで、一皮剥けば人よりずっと弱くてさ。
なのに誰かに甘えるのが下手で、だから結局、何でもかんでも自分ひとりで抱え込んじゃうヤツだって。」


ちゃんとわかってるから。


そう言ったジュンの言葉に、心が揺れ動いている自分がいた。



「俺はあの男とは違うよ。
お前のこと泣かせたりなんかしねぇから。」


もう、どうすれば良いのかなんてわかんない。


ただ、子供は一分一秒ごとに大きくなっていて、そして今、瑠衣はあたしの傍には居ないということは、事実なのだ。


あったかい家族が欲しいのだと、あの人は言っていたはずなのにね。


記憶を掘り起こすごとに、瑠衣の吐いた嘘の数を思い出す。






もう、信じることにも疲れたよ。








「百合、とりあえず今日は帰れよ。
行くとこないなら、俺の部屋使っても良いから。」


「そこまでジュンには頼れないって。」


何を今更、と彼は笑い、体を離した。


あれから3時間以上が経過しているが、瑠衣からの連絡はないままだ。


月は変わらずいつもそこにあるはずなのに、なのに手を伸ばしたってちっとも届きはしなかった。

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