渇望
風邪をこじらせ、入院してそのまま、帰らぬ人となってしまったのだ。
あたしとジュンの喪失感は、言葉には出来ないほどだった。
おばあちゃんには、本当に色々なことを教わったのにね。
葬儀を終えて、結局あの家は取り壊されることとなり、それからふたりだけで暮らす日々が始まった。
それでも、決して広くはないアパートを借り、頑張ろうと話したね。
けれど、あたしよりずっと辛かったろう彼は、更に仕事も忙しくなり、同じ部屋で暮らしていても、徐々にすれ違うことが増えていった。
喧嘩をしたわけではない。
互いに忙しいからこそ一緒にいられる時間は大切にしていたし、愛してる気持ちだって変わりはなかったはずなのに。
なのに、ダメだった。
原因なんて明確なものはないけれど、でも、少しづつ会話が減り、相手のことがわからなくなり、どんどん苦しくなるばかりだったから。
ならばもう、別れよう、と。
それが、今年の春の出来事だ。
「俺、今でも気持ち変わんないし、出来る事なら百合とやり直したいなって思ってるけどさ。」
「うん。」
「でも今はこのままの距離でいる方が良いのかな、って。」
ジュンはグラスに移し替えた牛乳を流し込み、そう言って肩をすくめる。
あたしは黙って頷いた。
「まぁ、先のことなんてわかんねぇし、今は色んな事精一杯やるよ、俺。」
ジュンはずっと昔から変わらないね。
だからそんな言葉に、あたしはどれほど救われてきただろう。
「行こうか。」
あたしとジュンの喪失感は、言葉には出来ないほどだった。
おばあちゃんには、本当に色々なことを教わったのにね。
葬儀を終えて、結局あの家は取り壊されることとなり、それからふたりだけで暮らす日々が始まった。
それでも、決して広くはないアパートを借り、頑張ろうと話したね。
けれど、あたしよりずっと辛かったろう彼は、更に仕事も忙しくなり、同じ部屋で暮らしていても、徐々にすれ違うことが増えていった。
喧嘩をしたわけではない。
互いに忙しいからこそ一緒にいられる時間は大切にしていたし、愛してる気持ちだって変わりはなかったはずなのに。
なのに、ダメだった。
原因なんて明確なものはないけれど、でも、少しづつ会話が減り、相手のことがわからなくなり、どんどん苦しくなるばかりだったから。
ならばもう、別れよう、と。
それが、今年の春の出来事だ。
「俺、今でも気持ち変わんないし、出来る事なら百合とやり直したいなって思ってるけどさ。」
「うん。」
「でも今はこのままの距離でいる方が良いのかな、って。」
ジュンはグラスに移し替えた牛乳を流し込み、そう言って肩をすくめる。
あたしは黙って頷いた。
「まぁ、先のことなんてわかんねぇし、今は色んな事精一杯やるよ、俺。」
ジュンはずっと昔から変わらないね。
だからそんな言葉に、あたしはどれほど救われてきただろう。
「行こうか。」