渇望
「久しぶりだね。」


挨拶にしては間抜けだ。


それでも目前の彼が笑っているから、あたしも釣られるようにぎこちなくも笑う。


瑠衣があたしを見つけられないことくらい、もうわかってる。


そして、いつもアキトだけが、あたしの居場所を知っていたんだ。



「こんなとこで、どうしたの?」


何かあった?


そう言いながら、アキトは少し首を傾けた。


だからと言って、決して狭くはないこの街で、こうも簡単に見つけられるなんて。



「別に何もないよ。」


と、返したけれど、やっぱりアキトは笑っていた。



「あ、飯行こうよ、飯!」


「ちょっ、ちょっと!」


なのに、奢るから、と彼はあたしの手を引いた。


その強引さに戸惑っていると、「瑠衣も呼ぶから大丈夫!」と言われる始末。


あたしを安心させるために言ったのかもしれないが、今は会いたくなかったのに、と正直思う。


おたおたとして、状況なんてさっぱりで、そして人の目も痛い。


手首にまで残る痕跡もまた、ちらちらと見えていた。


歩いたのはきっと100メートルもなかったろうけど、でもあたしは、やっぱり挙動不審なままだった。

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