渇望
あたしとアキトは焼肉屋の個室で向かい合わせに座るが、思わず小さくなることしか出来ない。


彼はやっぱり楽しそうに色んな事を喋りながら、大量の注文をする。


どんだけ食べるんだよ、って感じだけれど。


そして待つこと15分、扉が開いて、来た瑠衣は目を丸くしていた。


きっと、あたしがいることを知らなかったのだろう顔だ。



「百合のこと、ナンパしてきちゃった。」


ラチられてきちゃった、なんて冗談は言えない。



「瑠衣、別に怒らないだろ?」


アキトはそう言って、彼を見る。


その瞳はいつの間にか冷たくなっていて、瑠衣と目を合わせる時のこの人は、いつもこうだと怖くなる。



「だって百合、可愛いんだもん。」


アキトはわざとらしくあたしに抱き付こうとし、それがまるで瑠衣を挑発しているかのようで、どうすることも出来ないままだ。



「百合、何やってんだよ?」


それはもしかしたら、別の意味だったのかもしれないけれど。


瑠衣は目を細め、あたし達を見た。



「あんま心配させんなよ。」


髪の毛が掬い上げられる。


そして彼は、あたしの横に腰を降ろした。

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