渇望
惹かれ合うことは理屈じゃなくて、だからそこに意味なんてないのかもしれない。


けれどもあたし達は、あの頃、弱さゆえに求め合った。


だから傷つけたのが一体どちらだったのか、なんてことはわからないけど。


瑠衣を救おうだなんておこがましいことは思ってなかったけど、でも、何ひとつしてあげられなかったね。


無力が罪だったのか。


運命は残酷で、時に関わる全ての人の歯車を狂わせる。


季節が廻り、あの日が近付く度に、幼かった日々と痛みを思い出し、浄化されない想いに蝕まれてしまう。




それがあたし達の、

許されざる罪ということ。







「瑠衣。」


缶ビールを手に、キスを交わしながら、ふたり、含んだそれを口内で共有した。


生温かな苦味に支配され、隙間から漏れ伝ったものを、彼が舐め上げる。


もしかしたらあたし達は、互いに傷だらけだったのかもしれない。


体は焼けるように熱く、だからこのまま溶けてしまうことを願ったのに。


儚いものほど綺麗だと思うのは、日本人の美徳だろうけど。


でも、雪よりも、桜よりもずっと、瑠衣の方が消え入りそうだったね。

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