不器用に、キミと。


アイツを待ってるあたしがいる。


どこかで何か期待でもしているのだろうか。


期待?


なら、なんの期待だ。


もしかして、私はキョウジとアイツを重ねてる?


ううん。間違いなく重ねている。


セージ、だっけ…


初めてキョウジとデートのときみたいな気持ち。


ドキドキで、会えると思うと嬉しくて、待ってるだけで楽しかったあの頃。


何度デートしたって、その気持ちは変わらなかった。



でも、キョウジは違って…



『っ!?まこと…っ』



“しまった”って顔してた。

いつからだったんだろ。

ずっと好きだったのに。
やっと手に入れた幸せだったのに。

ずっとこの幸せが続くと思ってたのに。



一つ思い出すと、また一つと思い出してしまう。

悲しいと思ってしまうと、簡単に私の視界は歪んでぼやけてしまうんだ。


「…っ」


鼻の奥がつんとした瞬間、影ができた。



「…なにシケた面してんだよ。」



心地よく耳に響く声。


誰だかわかると、ゆっくりと顔をあげてその名を呼ぶ。



「セージ。」


「聖地だっつの。のばすな。」


普通に話す聖地に、涙を気づかれないように慌ててぬぐった。


「さーせん。てか、なんで呼び出したのよ。」


何事もなかったかのように、ツンと言い放ったあたしに、聖地はさらりとこう言った。



「会いたくてさ。」


「は」


「つきあってよ。」


_
< 21 / 35 >

この作品をシェア

pagetop