不器用に、キミと。
アイツを待ってるあたしがいる。
どこかで何か期待でもしているのだろうか。
期待?
なら、なんの期待だ。
もしかして、私はキョウジとアイツを重ねてる?
ううん。間違いなく重ねている。
セージ、だっけ…
初めてキョウジとデートのときみたいな気持ち。
ドキドキで、会えると思うと嬉しくて、待ってるだけで楽しかったあの頃。
何度デートしたって、その気持ちは変わらなかった。
でも、キョウジは違って…
『っ!?まこと…っ』
“しまった”って顔してた。
いつからだったんだろ。
ずっと好きだったのに。
やっと手に入れた幸せだったのに。
ずっとこの幸せが続くと思ってたのに。
一つ思い出すと、また一つと思い出してしまう。
悲しいと思ってしまうと、簡単に私の視界は歪んでぼやけてしまうんだ。
「…っ」
鼻の奥がつんとした瞬間、影ができた。
「…なにシケた面してんだよ。」
心地よく耳に響く声。
誰だかわかると、ゆっくりと顔をあげてその名を呼ぶ。
「セージ。」
「聖地だっつの。のばすな。」
普通に話す聖地に、涙を気づかれないように慌ててぬぐった。
「さーせん。てか、なんで呼び出したのよ。」
何事もなかったかのように、ツンと言い放ったあたしに、聖地はさらりとこう言った。
「会いたくてさ。」
「は」
「つきあってよ。」
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