不器用に、キミと。




『オマエさ、アボガドロの法則って知ってるカー?』


『わかんナイ』


『いいカー?イタリアのアボガドロってのがさまざまな気体の体積と分子数の関係について調べて提唱したものダ』


『まさに偉人だネ』


『だろウー?また、アボガドロ数は6.0×じゅ…』




頭の中がおかしくなった。


頭の中に住んでる小人が
なんだか難しいこと言ってる。


いや、最近化学で習ったことを永遠と繰り返してる。


どうしちゃったんだろ。

いつの間に覚えてたんだろ。


予習復習はやっぱり大切だね。


私の脳みそなかなかやるね。


これだけ覚えてるなら、いらないものは早く忘れた方がたくさん頭に入るよね。



たとえば、浮気されてたこととか。



もはや、目の前のこいつ自体を消滅させちゃうとか。



「おーのーれーはっ!まだ生きてたんかー!!!」



「ワ…ッ」


セージが小さい声を漏らしたのと同時に、私はキョウジを投げ飛ばした。

中学の時柔道を習っていた。


黒帯とまではいかないが、気の抜けた同い年の素人なんか、その気になれば投げられなくもない。

気が立った今だから、デカい体のキョウジを投げ飛ばせたんだろう。



「コワ…っ」


小さく呟いたセージと目が合う。


ギョッとしたセージなんか気にせず、私はやつの襟元につかみかかった。


「もとはと言えばあんたのせいだ!!」




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