不器用に、キミと。



「キョウジ…っ」



くやしくて、苦しくて、どうしようもないくらいに許せないのに。

でも、それ以上に

好きって気持ちが私を邪魔する。


だって、初めての恋愛なんだもん。


いつも想ってるだけの恋しか知らなかった私に、形だけでも両思いを教えてくれたんだもん。




キョウジ…


「す…っ?!」



言葉が溢れそうになったとき、独特の匂いが私の体を包んだ。


私キョウジに抱きしめられてるんだって気づくのに時間はかからなかった。


この匂い…落ち着く。




拒否しなきゃいけないのはわかってる。


私を裏切ったくせに、こんなことするなんて、ズルい男だと思う。


でも、私の腕は彼の背中に回していて、強張っていた体は力が抜けて、彼に身を任せてしまった。


彼を見上げると目があって、優しく微笑む顔を見ると、また涙がでた。


指で涙を拭ってくれて、優しい色をした瞳が私を好きだと言っているような気がした。


少し照れたように目をそらし、また自分の胸に私を押し付けるように抱きしめるキョウジ。


キョウジの鼓動がすごく速くて、もう一度彼を信じたいと思った。




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