MOON LIGHT
どれ位経ったのだろう…??
私にとっては1分がまるで1時間のようにとてつもない重みがのしかかって来る様だった。
“どなたですか…??”
私がそう言おうとした瞬間に、先に男の人が口を明けた。
『っ…―』
開きかけた口は、息をする魚のようにパクパクと開いたまんまになってしまった。
「お嬢ちゃんは、この家の子かなぁ…??」
綺麗なアルトの低音が口から発せられた。
『っ…は、はぃ…』
今にも泣き出してしまいそうで…そう一言発するのが精一杯だった。
「お母さんと、お父さんはどうしたのかな??」
少し屈んで、視線を私に絡み合わせながら問いかけてくる。
普通に出会っていれば、綺麗なお兄さんとして慕って居るだろう…。
『…っ』
“居ません”
そう一言を言うだけなのに、
どうしても言えなくてつい下を向いてしまう。
下を見つめる目には涙が溜まって今にも溢れ出てしまいそう…。
声を発すると、一緒に嗚咽が混じってしまいそうで声が発せられないで居た。