MOON LIGHT


『いっ…いやぁっ…!!』


適わないのは、分かってる。

でも、少しだけでも時間が稼げれば…



その一心で、ひたすら男の手から逃れていた。


なのに…あぁ、神様は非情だ…


抗う余地もくれないなんて…。


“ビリッ…ビリビリッ…ジー”


なにが起きたのかなんて、全く分からない。


考える時間もなかった。


気付いたら、涙はこめかみに向かって流れ始めていた。


涙で、目の前は霞んで見えた。


玄関前に置かれている、大きな鏡が私を写し出す。



お気に入りのブラウスは、ビリビリに破られ今になっては、ただのぼろ布。


ブラウスの下に、タンクトップを着ていたのが不幸中の幸いだった…。



“あぁ…聖だけでも助けて…”



頭の中はこればかり…。


大声を出して、この状況を教えてあげたい…。


でも、しゃくりあげながら泣いてたせいか、大声は疎か、声さえも出せない。


あぁ…私が家にあげたから…


どうか、神様…聖は助けてあげて下さい…。


とめどなく流れる涙…それとは裏腹に頭の中は驚く程、冷静になっていた。


もう、感情なんて物は壊れかけていた…



男の手は、お腹の辺りをまさぐっていた。


“あぁ、もう駄目なんだ…”


いつの間にか、涙はスーッと引いて呼吸も整っていた。


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