MOON LIGHT
『ひ、じり…っ』
どうにかして助けを呼ぼうと思った私は、
そーっと玄関のドアを開けようとした。
“バンッ…”
壁を叩く音が、部屋中に響いた。
「どこに行くのかなぁ~??」
男の声音は笑っていたが、目は驚くほど冷めていた。
大きな音と、男の放つ異様な雰囲気で足がすくんでその場で尻餅をついてしまった。
『…ぁ、あ…』
男がゆっくりと近づく…
「ゆっくりしてなきゃね…??」
男はどこから持ってきたのか、ガムテープで私の口元を塞いだ。
手と、足も同様に縛りあげて部屋の隅に座らされた。
抵抗は出来なかった、
と言うよりする時間すらなかった。
「君はそこで見てるといいよ♪」
男は、私の耳元でそう囁いた。
まるで、
“所詮お前には何も出来ない”
そう言われているようで、
気付かぬうちに唇を強くかみ締めていた。